京都子供の音楽教室

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「音楽なんて大嫌い!」。 大嶋義実  Flute

室長 大嶋義実

小さい頃、習っていたピアノの先生から「もう来週からはレッスンに来なくていい」と《クビ》をいいわたされました。練習をしなかったからです。練習しようとしても、どうしても音符を読めなかったのでしかたありません。

それでもピアノだったので、押す鍵盤を間違えなければ、音を作る苦労も音程を取る心配もありませんでした(もっとも一度にたくさんの音を鳴らすというピアノならではの苦労はありましたが)。譜面を読めなかったのは、音符の長さの感じ方がよく分からなかったからです。一定のテンポで拍をとり、音価に従ってリズムを生みだすことを理解できなかったのです。拍節感がないのですから、楽譜どおりの音楽になるはずもありません。

その後、単音しか出ないのでピアノよりは簡単にちがいないと思ってフルートをはじめました。ところがフルートは音程や音色を自分でつくらねばなりません。もちろんピアノも自分の出す音色に神経をいきわたらせることは必要でしょう。でも、フルートの場合は、演奏しようとしても音自体がプスッとも鳴らないのです。音符を読む以前の問題です。ですから音が出せるようになって、ようやく楽譜の読み方をもう一度勉強しなおしました。やっぱり音符から拍節を感じることが苦手でした。大きな声では言えませんが京都芸大に入学したときは、三連符を正確に歌うことも演奏することもできませんでした(他の人には秘密にしておいてください)。 3連符ではなく になったり、 になったりしてしまうのです。同級生たちが、こともなく三連符を演奏することがうらやましくて仕方なかったことをおぼえています。

それでも長くフルートを続けていると、音楽が生まれるためにはメロディーのなかに和声を感じ、拍節感、音程感、音色感を持ってそれらをコントロールする必要があることが分かってきました。とはいっても頭で分かっただけです。実際にはなかなか身体がいうことを聞いてくれません。たとえ単旋律でも「拍(リズム)に乗って、音程をとって、音色を磨く」という作業を同時にこなすのです。そんなややこしいことが僕にできるわけがないと思った時期さえありました。

リズム感だけでなく音程の感覚や調性感もかなり怪しいものでした。絶対音感が中途半端にしかついていなかったからです。#も♭も三つ以上になった途端ワケが分からなくなるのです。こんなことなら100%相対音感のほうがよっぽどましだ、と今でも思っています。自分が絶対音感で聞いているのか、相対音感で聞いているのか判らなくなってしまうのです。だから聴音をしても視唱をしても自信が持てなくなるのは当然です。

こんなことばかりでしたから、音楽を嫌いになるのもしかたがないとおもいませんか。

でもほんとうは「嫌い」というのはウソです。「大好き!」なんです。音楽が「好きで好きで好きで好きで好きで」たまりません。だから余計に自分の能力のいたらなさが悔しくて「音楽なんて大嫌い!」と天邪鬼(あまのじゃく)を言いたくなってしまうのです。

今となっては僕をクビにしたピアノの先生に感謝しています。だって自分にはさまざまな音楽的能力が欠けていることをズバッと言ってくれたのですから。この先生の指摘がなければ、何を勉強していいのかもわからないまま、ただ漫然とヘタなピアノを続けていたと思います。

多分みなさんが思っているほどには、ひとにとってなにかの能力が劣っていることは大きな問題ではありません。問題なのは「自分にはどんな能力が欠けているのか」がみえないことです。「問題のありか」さえ見つけられれば、あとはそれを克服すればいいだけです。克服すべき課題を自覚しないまま勉強を続けることほど無意味なことはありません。みなさんには、どんなときも自分自身に対する問いかけを忘れないでいただきたいと思います。

こんなことをわざわざお説教するまでもなかったですね。

子どもの音楽教室では、一人ひとりが持つそれぞれの問題に気づく方法を教えてくれます。その解決もひとりでできるよう、優秀な先生方が丁寧に指導してくださるはずです。

ただ、どんなに優秀な先生でもひとつだけ教えられないこと、指導できないことがあります。それが「音楽が『好きで好きで好きで好きで好きで』たまらない」という内発的な気持ちです。こればかりは、指導したり教えたりできる類のものではありません。そしてこの気持ちこそが音楽をするための最も大きな力となります。そうでなければ僕のような劣等生に音楽を続けられるわけがありません。

では、「大好き」な気持ちはどうやって生まれてくるのでしょう。実はこうした気持ちや感情はひとからひとに感染して伝わっていくものなのです。勉強して獲得する能力や、訓練して身につける技術とは全く違うルートを通って、こころからこころに伝わっていきます。みなさんが花を見て「わぁ!綺麗!」と思うこころは、同じこころを持つお母さんやお父さんからみなさんに伝染(うつ)っていったものです。インフルエンザにはうつりたくないけれど、こんなこころならいくらでもうつってほしいものです。

おなじように「音楽が『好きで好きで好きで好きで好きで』たまらない」という気持ちも誰かから感染して、こころの中に育まれます。その誰かは、誰よりも音楽教室の先生方です。もちろん周りの大人たちやお友達から「好き」がうつることもあるでしょう。でもここの先生方は全員、だれにも負けないほど「音楽が好き」という気持ちを持っています。予習も復習もいりません、どうぞ音楽を愛してやまない素敵な先生方から、たくさんの「好き!」をわけてもらってください。

みなさんはこれから、この教室でさまざまな音楽的能力を身につけていかれます。そのなかで、不得意なことや、できないことに悔しい思いをするときもあるはずです。それを乗り越えるために必要なのは「音楽が好き!」という熱いおもいだけです。音楽の勉強に行き詰ったときは、先生の持つ音楽への情熱をマネしましょう。きっと新しい勇気が湧いてくるにちがいありません。

保護者の皆様へ

「いかに人生をうまく生きるか」ばかりに誰もが血眼になっている時代にあって、どう考えても「世の中をうまく立ち回る」こととは関係なさそうな音楽をわが子に学ばせる決断をしてくださったその勇気に心からの敬意を表します。

音楽をはじめとする芸術に触れることは「うまく生きる」ことにはあまり役に立ちません(たぶん)。けれども「よく生きる」ために、ひとのいのちには欠かせないものです(ぜったい)。

わたしたちは、子供たちがこれからの人生を「うまく」ではなく「よく」生きるためのささやかなお手伝いに携われることを誇りに、この教室を運営してまいりたいと思います。

ご理解とご支援のほどを、なにとぞよろしくお願い申し上げます。

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毎週土曜日開講